【とある企業の珍事録】営業マンの落とし穴。大谷さん(仮称)の場合。その2
【とある企業の珍事録】営業マンの落とし穴。大谷さん(仮称)の場合。その1からの続き。
私とほぼ同じタイミングで入社した大谷さん。
入社時期は同じでも考え方は人それぞれ。
退職を控えるレジェンドの悪いところばかり真似てしまい、すくすくと悪意が育つカオスな展開に。
【登場人物】
・レジェンド
60歳の定年を機に転職をしてきたレジェンドサラリーマン。
前職の会社では本部長を経験、常に皆勤賞の古き良きサラリーマン。
キャリアがあるために頑固で話が長い。
現在の時代に即した柔軟な思考を持っていると思ったら思い込みだった。
・大谷さん(仮称)
20代後半の転職してきたばかりの営業マン。
自分の経験してきたことには圧倒的な自信を持っているが、常識が不足していて理屈で論破されてしまうことも。
たまに感情がコントロールできずに怒涛の口撃をしてしまい若さが出てしまう。
・社長
私がお世話になっている会社のトップ。典型的な古い企業の社長で働き方改革など二の次。
営業は足で稼ぐべきと、コロナ禍にかかわらず従来の営業スタイルを好む。
小さい虫が死ぬほど嫌いなど、大抵こういった人はアナログでかわいい一面もある。
・私
大谷さん(仮称)と同時期(厳密には2週間後)に転職してきた元工業製品の開発・製造営業マン。
会社を現場から改善することをモットーとして、いちサラリーマンとして日々改善を提案していきます。
レジェンドが会社を辞めることが決まって1カ月ほどが経ちました。
突然の辞表に驚きつつも、やることは変わらず引継ぎと商品に関する知識を覚えること。
今はちょうどコロナ禍で積極的な営業活動がしづらいこともあり、会社にこもってひたすら引継ぎ打合せの毎日。
ある日のことです。
社長とレジェンドと大谷さんと私の四人で今後の営業活動について打合せをしました。
ここで、引継ぎを始めて一カ月ほどたってどの程度引継ぎができたかを社長が質問します。
ちなみに、私はこの会社の新規事業を担当することになったため、引継ぎの必要はなく、
レジェンドからの引継ぎは大谷さんに対してがメインでした。
大谷さん「1カ月で引継ぎの進捗は全体の10%程度です。」
社長「なぜ1カ月でそれしか進んでないんだ!引き継ぐクライアントは20社くらいしかないだろ。」
大谷さん「レジェンドの営業に同行していますが、話している内容もいまいちまだわかりません。」
社長「うちにはそんな体力も時間もない。客先を訪問して教えてもらいながら進めていきなさい。」
大谷さん「ですからお客様と会って話すには商品知識が、、、。」
社長「客先に行くのにそんな難しい商品知識はいらない、なぜ10%しか進んでないんだ!」
大谷さん「ですから、、、。」
レジェンド「・・・・。」
こんな不毛なやりとりが30分ほど続きます。
本来は引継ぎする全体を把握しているレジェンドにしか進捗率は分からないはずですが、
レジェンドはダンマリを決め込んでいます。
しかもなんか話している内容がずれている気もするし。。。
そろそろ私の出番でしょうか。
私「社長。おそらく社長の言っているレベルだと彼は100%近くまで来ていると思いますよ。」
私「大谷さんは、商品を全て知らないと営業に行けないってことはないんじゃないですか?」
大谷さん「はい、でも質問が答えられないと営業として失格なので」
私「もちろんそれが理想だけれど、うちの製品は電子機器だし持ち帰って技術に確認することもできますよね?」
大谷さん「はい」
私「社長が言っていることは、それよりも早くお客様と接触して新しい関係性を築いて欲しいってことだと思いますよ。」
私「それに、ご挨拶でいきなり専門的なことを聞かれることは少ないからそこまで警戒しなくていいと思います。」
私「社長そうですよね?」
社長「そう、私だって全てを知っているわけではないし、それを言ったら一生営業に行けないだろ。」
レジェンド「・・・・。」
こんな簡単な話も途中でつまずいてしまい、通訳しなければいけない状況に驚きました。
相手の質問の意図を理解する力がお互いにない場合、こうも不毛なやり取りが続いてしまうものなのか。。。
以前勤めていた会社がかなり優秀に思えてきました(汗)
結局、このしょうもないやり取りは私が間に入ることで無事収束し、
今後段階的に営業活動に入ることで会議は終了しました。
今回の一件で、レジェンドと大谷さんは私を”自分より全てが劣っている人”という評価から、
”話術は優れている人”にレベルアップしたようで、
レジェンドは「次回もお得意の話術で社長に説明をお願いしますね。」
なんて話をしてくるようになりました。(笑)
理解力が低い人は、相手の正確な評価ができず、相手を不快にさせて自分の評価を下げる。
さらに自分自身に対する理解も足りないために、自分の未熟さを反省することなく同じことを繰り返します。
この負のスパイラルに陥ってしまえばなかなか抜け出すことが出来ません。
唯一それを助けてくれるのは”素直さ”であると思います。
貴重なアドバイスを受け入れ、理解しようと努力をする。そして自分を改める方にのみ成長の扉が開かれます。
それを拒絶する人は誰もアドバイスをしてくれなくなり、気づかないうちに人が離れていく。
そんなことにならないようにしていきたいものですね。
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