人がいなくなるときこそ上司の能力が試されるよねっていうお話。
私が勤めていた会社の周りで起きた話です。
ある開発会社の一つの部署で同時に人が退職することになりました。
少ない人数で切り盛りしていたので複数人が辞めてしまうと当然担当できる方がいなくなり現場が混乱します。
そんな状況に対してその部署の管理者がとった行動は、とにかく残った部下にどんどん窓口を切り替えていくことでした。
しかし既に手一杯の状況なので当然手が回るはずがありません。
結局、社内と調整して自分の部署の業務領域を減らし他部署にフォローしてもらうことになりました。
本来、この管理者は最近まで現場を担当していたいわば”プレイングマネージャー”のような方にも関わらず、自分が巻き取ることもせず、ギブアップをしてしまったのです。
このように管理職になってしまうと担当を自分で持つことができなくなってしまう方が多くいます。
それは何故でしょうか。
立場が人を作る
一つ目の理由は自分が会社に求められている仕事を勘違いしていること。
本来、自分の部署を円滑に回すことが管理職の役割ですが、大抵の管理者はいつの間にか管理すること自体が仕事になります。
自分の上司(課長であれば部長など)に報告するためだけに都度担当に進捗を確認したり(アドバイスしたり、何か手伝うということをしない)、出退勤の管理や申請の承認ボタンをひたすら押す作業に没頭します。
まさにこれが自分の使命!と勘違いしてしまう方がほとんど。
これにより、現場の仕事は部下の仕事と決めつけ忙しい部下にどんどん仕事を回してしまいます。
そして二つ目は単純な能力不足。
一度管理者になってしまうと一つ目の理由で現場を離れ、今まで常に手を付けていた仕事から離れることで自信を無くしてしまい、そこから現場の仕事に苦手意識を持ち、徐々に能力が低下していきます。
傲慢な上司であればそんな仕事は部下にやらせておけば良いと現場仕事を丸投げするでしょうし、現場仕事に意欲のある方でも部下と同じ土俵では完璧な仕事をしなければならないと思ってしまうのでしょう。
それならば手を出さない方が良いと考えてしまい、結果的に不測の事態に備えるべき準備を怠ってしまいがちです。
管理職は現場仕事のプロではありません。それでも現場の部下に教えられながら常に温度感を肌で感じておくべきなのです。
本来、自分の部署を円滑に回すことを優先すれば、常に現場で指揮をとり、いざというときには自分で直接業務を対応すべきです。
ところが印鑑や承認ボタンを押すことを生きがいとしてしまう管理者は飛ぶことを忘れた鳥のようにもうそこに戻ることができません。
結果、現場を担う従業員に負担がかかり、従業員が潰れたり会社を去っていくという負のスパイラルに陥ります。
不景気だからこそ能力が高く売れる。
現在はコロナ感染症の影響も減ったため簡単に辞めることはないだろうと思う管理者は多いと思います。
ですが、実際は能力が高いスタッフこそ簡単に転職をしてしまいます。
そして実際の企業は見通しの悪い時代を乗り越えるため、より少数精鋭を目指す流れは続き、1名が減るだけで現場が回らなくなるような会社はさらに増えていくものと想像します。
こういったことを防ぐためにも会社は中間管理職に対し、プレイングマネージャーであり続けるよう常に現場と密接につながるような役割を与え、”管理”という都合の良い仕事を否定することから始めないといけません。
管理者のあるべき姿とは
先日、自動車メーカーであるトヨタ自動車は、執行役員の人数を減らし、その分、各部門の責任者として配置し直す人事を発表しました。
この責任者は一見、経営側から従業員側へ降格となりますが、給与などの待遇面も変わらないと言います。
つまりこれは、責任者は従業員と一体となり、現場の陣頭指揮をとりなさいという会社からのメッセージ。
豊田社長は以前から役員を大幅に減らすなど徹底的な社内改革を進めてきた方です。
不景気な時だからこそ上から変えていく勇気を持ちそれを実行できる経営者らしい行動。
豊田社長は創業者一族出身ですが、会社の象徴なだけではなく日本一の企業を支える経営手腕はダテではありませんね。
”会社は頭から腐る”と言いますが、このコロナショックにより図らずも経営者や管理者の能力が炙り出されることになるでしょう。
少数精鋭に求められる管理者の汎用性。
管理者だけでなく、これから管理者になっていく方も毎日のちょっとした意識の積み重ねが管理者の素養を培ってくれるはずです。
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