名選手、名監督にあらず。
このタイトルにある言葉、皆さんは聞いたことがあるでしょうか?
この言葉はプロ野球界でよく言われる言葉です。
選手として素晴らしい成績を残した人でも監督としては必ずしもうまくいくとは限らない。
今回は、組織でプレイヤーだった人がマネージャーになった際に起こった出来事です。
私の会社ではここ数年で、大きく組織が変わりました。
役員が若返り、それに伴い中間管理職へも積極的な若手の登用が始まりました。
一般的に見れば健全な流れかと思いますが、急な人事は時に、会社の活動に不全を引き起こすきっかけになることもあります。
以前までは役職者はある一定の年齢以上の方がほとんどを占めており、いわゆる叩き上げの人がほとんどいない状態でした。
そのため、現場からすると「現場は苦労しているのに上司は何も分かっていない」という声があちらこちらから聞かれました。
ましてや各部門の役職者は落下傘的に配置された名ばかり管理者。
現場はどれだけ頑張っても出世はできないだろうとモチベーションを失っていたのです。
若手、現場主義に立ち返った人材登用
その後、冒頭にあった通り役員が若返ったことにより、現場に理解のある人が出世するようになりました。
本来であれば、現場仕事ができて人望もありその人が上司になるのは誰もが望むところで、現場は上手く回ると思っていたのですがそうはなりませんでした。
では何が問題だったのでしょう。
まず、若手が抜擢され裁量が与えられるとまずその若手は自分でできることを精一杯やります。
中間管理職として必要な現場の把握と会社への報告のため、部下の仕事を根掘り葉掘り聞き、問題があると思ったらアドバイスをしていきます。
自分が経験した仕事でなおかつ、なまじ仕事ができる人だからこそ、直接現場を改善しようとしたのです。
でもその仕事は部下の仕事であって上司の仕事ではありません。
本来は現場解決のため、必要に応じて会社を説得したり、クライアントの上層部への訪問、他部署への説明や交渉など部下からすれば他にやって欲しいことはたくさんあります。
他部署やクライアントからのクレームがあった場合も、ときには部下を守るために反発する必要もあるでしょう。
ところが、急に抜擢された叩き上げの管理者は自分の裁量内で一番やりやすい部下への干渉を一番に始めてしまうのです。
現場の人たちからすると普段自信を持ってやっていた仕事に口を出され、それが尊敬できる先輩であろうと次第に面倒な上司だなと思われるようになったのです。
反対に部下に気を使い過ぎてしまったことにより反感を買うケースもあります。
以前、職場で担当者が本来やらなければならない仕事を、忙しそうだからと上司が気を使って自主的に仕事を手伝ったところを目にしたことがあります。
もちろん部下がやりたくないと言ったわけではなく、あくまでも上司が忙しい部下を慮って本人のわからない所で自主的に仕事を代行したのです。
ところが、事情を知らない周りはなぜ担当がやらないんだとその担当者に対して仕事ができない人間だとレッテルを貼りました。
周りの人たちは当たり前のように普段からその仕事をやっているのにと、そこには自分が正当に評価されていないと思っていることによる嫉妬も影響しているのでしょう。
とはいえ、本人に相談もなく図らずも仕事を取り上げるような形になってしまった上司は、動機が正しくとも結果だけを見ると間違った行動となってしまったののです。
善意や思いやりは時に部下の評価を下げることになります。自分の会社における役割を理解することが必要です。
上下関係ではなく前後関係
一般的に会社の組織図は一番下に現場担当者、一番上に社長が記載されたツリー構造になっていることが多いと思います。
これは下の者より上の者の方が優れていというイメージを持っているからこそこの構造にあらわれているのです。
でも、実際は会社には役割があり、
例えば、担当者は現場を担当する役割、係長はそのチームをまとめる役割、課長はその係を、部長が課をまとめ、他部門と調整を行う役割とそれぞれやるべきことが決まっています。
社長ですら会社を代表する役割であり、現場に干渉することは正しい役割ではありません。
この、偉さと優劣を履き違えると、余計な干渉となり、非効率な仕事になってしまいます。
若手を抜擢することは大いに結構なことですが、その前に役割を理解させ、適切なポストに配置する。
大抵、現場から人材を引き上げる場合、現場に特化したエキスパート(専門家)が多いため、管理職でうまくいかないことはよくあります。
普段から様々な役割の人と話し、思慮深く観察できる人がマネージメントに向いているのですが、そういった人ですら立場が変わると周りが見えなくなる(あるいはその階層での役割の広さに適応できない)ことがありますので、マネージメントタイプの上司にあたるケースは希少であると言えるでしょう。
このマネージメントについての適性はまたの機会に話す事にしましょう。
コメントを残す